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最高裁判所第三小法廷 昭和29年(あ)3944号 判決 1956年9月11日

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人長崎祐三の上告趣意第一点について。

所論は憲法二二条違反を主張するけれども、覚せい剤取締法が一方において覚せい剤の適正な使用の途を開きつつ、他方において、法定の資格者以外の者によるその譲渡、譲受、所持等が濫用の因をなしやすいことに鑑み、法定の場合の外一般に覚せい剤を所持し、又は譲り渡す行為等を禁止し、これが違反に対し罰則を定めても公共の福祉のために必要なものであることは当裁判所大法廷判決(昭和二八年(あ)第四三二九号、昭和三一年六月一三日言渡判決)の趣旨に徴し明らかである。それ故、法定の資格者でない者が覚せい剤を所持譲渡しても必ずしも公共の福祉に反するものでないことを根拠として、原判決が憲法第二二条に違反するとの主張は、その理由がない。

同第二点について。

所論は単なる法令違反の主張であって、上告適法の理由とならない。(本件の所持は昭和二九年五月八日、五月一〇日の所持であり、本件譲渡は、同年四月中及び五月五日の譲渡であるから、他に譲渡した行為と所持とは牽連犯の関係にならない)

また記録を調べても刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。

よって同四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 小林俊三 裁判官 垂水克己)

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